2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ポール・メイソン『ポスト・キャピタリズム』/金融化について

本当は昨日の続きが書きたいのだが、引っ越しの準備のために本を整理していて手がつかず、処分する本を手に取ったら次のような一節が飛び込んできた。 「産業の衰退によって荒廃した英国の街を回ってみると、どの街並みも同じように見える。給料を担保にして…

山本浩貴(いぬのせなか座)『新たな距離』その1 私は転生しない

山本浩貴(いぬのせなか座)『新たな距離』(フィルムアート社、2024)を読んでまず考えたのは反復についてだった。次に考えたのが、フロイト-ラカンのことだった。繋がるかわからないが、下記になぜそのように考えたかを書いてみる。 本書は小説論≒制作論で…

『スーザン・ソンタグから始まる/ラディカルな意志の彼方へ』と『大江健三郎 江藤淳 全対話』

前々回、スーザン・ソンタグがナン・ゴールディンと荒木経惟について言及したと書いた。 jisuinigate.hatenablog.com 友人から、それは『スーザン・ソンタグから始まる/ラディカルな意志の彼方へ』(2006)という追悼シンポジウムをまとめた本に書いてるは…

「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」

先日、国立西洋美術館で「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」を見てきた。副題に「国立西洋美術館65年目の自問 現代美術家たちへの問いかけ」とあるように、1959年の西洋美術館開館以来初となる現代美術展である。 気づけば2012年…

ローラ・ポイトラス『美と殺戮のすべて』

『美と殺戮のすべて』 サービスデーだったので有楽町でローラ・ポイトラス『美と殺戮のすべて』(2022)を見てきた。 ナン・ゴールディンには、荒木経惟的な「私写真」のひとという雑なイメージしか持っておらず、ほとんど興味がなかったのだが(どちらかと…

ローラ・マルヴィ「視覚的快楽と物語映画」

ローラ・マルヴィ「視覚的快楽と物語映画」(斉藤綾子訳、1975、『新映画理論集成1歴史/人種/ジェンダー』所収)を読んだ。*1 エリザベス・ライトが批判していたので、ちゃんと読んでみようと思って手に取ったのだが、近年の表象批判の起源の一つでもあり…

ゲイル・ルービン「女たちによる交通」

「実際、彼は書かなかったか? 権力と女たちの所有、余暇と女たちの楽しみを? 彼は書いている。お前は通貨だと。交換の項目だと。彼は書いている。物々交換、物々交換、女たちと商品の所有と獲得。誰でも手に入れることができる生を生きるより、お前はお魔…

木庭顕『ローマ法案内』その3 交換関係と自由について

木庭『ローマ法案内』で(私が理解できた範囲で)一番重要と思われたのが、交換関係と「自由」についての洞察だった。 木庭は人間の活動にとって、具体的な空間、特に土地、テリトリーが欠かせないことに注目する。テリトリーの上で経済活動も行われ、その「…

マキャヴェッリ「マンドラーゴラ」

「マンドラーゴラ」(脇功訳、『マキャヴェッリ全集4』所収)を読んだ。マキャヴェッリの喜劇である。キャラが立っていてセリフも気が利いていて筋も意外に読ませるものがある慣れた筆致なのだが、その全体的な印象は珍妙。木庭顕が「政治的階層の堕落批判…

木庭顕『ローマ法案内』その2

木庭顕『ローマ法案内』からの引用。「カルト集団の政治浸透について : 若干の問題整理」(『法律時報』2022年11月)を読む上で役立ちそうなところ。 「以上のように、都市は神々という概念を巧妙に使って実現された。この点はしばしば、ギリシャ・ローマの…

『ルジャンドルとの対話』

ピエール・ルジャンドル『ルジャンドルとの対話』(聞き手フィリップ・プティ、森元庸介訳、みすず書房、2010)を読んだ。 ルジャンドルは「ドグマ」と言う「呪われた語彙、理解されなくなった語彙」を蘇生させた。その由来であるギリシャ語の「ドクサ」は見…

木庭顕『ローマ法案内』

2010年の羽鳥書店版。「君がいきなり街中で或る男から「お前は私の奴隷ではないか」」と言われ捕らえられるという想定から始まるのが、可笑しい。 「自由に関する限り、十二表法に少なくとも根を持つもつ一つの大きな制度が存在する。君がいきなり街中で或る…

エリザベス・ライト『ラカンとポストフェミニズム』その2

「フェミニズムにとって精神分析の理論的に重要な核心部分とは、いまではほとんど決まり文句になってしまっているが、性的差異が文化的なものに還元できないのと同様に、性的アイデンティティが生殖器だけで決定されるわけではないという主張である」(エリザ…

エリザベス・ライト『ラカンとポストフェミニズム』

エリザベス・ライト『ラカンとポストフェミニズム』を読んだ。 竹村和子の解説を先に読み、問題提起的であるものの、そのラカン解釈に違和感があった。ライトによる本文を読んだが、竹村とライトの間でも解釈の違いがあるように思った。 解説で注目すべきは…