2022-01-01から1年間の記事一覧

カデール・アティア 《記憶を映して》(2016)

国際芸術祭「あいち2022」に行ってきた。と言っても、時間的都合から愛知芸術文化センターと一宮市会場の一部しか見られなかった。 わたしが見た中で最も印象的な作品だったのが、カデール・アティア Kader Attiaの《記憶を映して reflecting memory》(2016…

PARAレクチャー・福尾匠「なぜ制作だけでなく作品があるのか」感想(というほどではないメモ)

神保町で福尾匠さんのレクチャー「なぜ制作だけでなく作品があるのか」を聞いてきた。PARA「作品とは何か」レクチャーコースの第一回だという。90分とは思えないほど充実した内容だった。 あいちトリエンナーレ2019をインスタレーションの問題として考えるこ…

「影をしたためる」

9月11日。渋谷のbiscuit galleryにて「影をしたためる notes of shadows」(松江李穂キュレーション)を見てきた。美術作家の菊谷達史、前田春日美による二人展である。 ※三人のインタビュー https://bijutsutecho.com/magazine/interview/oil/26027#.YybTgVVF…

イヴォ・ヴァン・ホーヴェ『ガラスの動物園』

「『ガラスの動物園』で私が見出したのは、はっきりしたヒロイズムのない世界、壊れやすい登場人物たちが住んでいる世界です」(ホーヴェ) 新国立劇場(中劇場)で、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出の『ガラスの動物園』を見た(初日)。 ホーヴェのことはよく知ら…

シネマヴェーラ/フォード特集『周遊する蒸気船』(1935)

シネマヴェーラでジョン・フォード『周遊する蒸気船』(1935)を見てきた。 上映前には蓮實重彦氏のトークが20分ほどあった。『周遊する蒸気船』には二人の「インディアン」がかかわっているという。もちろん「インディアン」という名称は現在使うことのできな…

ハル・フォスター『What Comes After Farce?』(2020)を読む4

第一部「恐怖と侵犯」の末尾におかれた第6章のポール・チャン論を見てみよう。 Paul Chan《Rhi Anima》 2017年3月、チャンはニューヨークの個展で《Rhi Anima》を発表した。https://www.artnet.com/galleries/greene-naftali-gallery/paul-chan-rhi-anima/ …

Martha Rosler Reads Vogue(1982)

北千住BOuy「Bedtime for Democracy」( https://buoy.or.jp/program/bedtime-for-democracy/ )にて、マーサ・ロスラー《マーサ・ロスラー、ヴォーグを読む Martha Rosler Reads Vogue》(1982)を見てきた。 1981年に設立されたニューヨークのケーブルチャ…

ハル・フォスター『What Comes After Farce?』(2020)を読む3

フォスターは本書の序盤で2011-12年のMoMA PS1の展覧会「September 11」に触れ、「今日の美術鑑賞のモードは情動的なものと化している」と指摘している。フォスターによれば、カントは「作品は美しいか」という古代からの問いを立て、デュシャンが「作品は芸…

ハル・フォスター『What Comes After Farce?』(2020)を読む2

フォスターはトランピズムの分析にあたって、ペーター・スローターダイクの『シニカル理性批判』(1983)を取り上げる(「第5章 原父トランプ(pere Trump)」)。 フォスターはここで参照していないが、『シニカル理性批判』が手元にないので、ジジェク『イ…

ハル・フォスター『What Comes After Farce?』(2020)を読む1

ハル・フォスターはマルクスが『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』に記した次の有名な一説を引用から始めている。 「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大な世界史的事実と世界史的人物はいわば二度現れる、と述べている。彼はこう付け加えるのを忘れた。一…